がん治療が食事に与える影響

がん治療(化学療法・放射線療法・手術)は、がん細胞だけでなく正常な細胞にもダメージを与えるため、さまざまな栄養上の問題を引き起こします。特に高齢者は、治療前から低栄養の傾向がある方も多く、治療による影響がより深刻になりやすいという特徴があります。

治療による主な食事への影響

症状原因発生頻度
食欲不振抗がん剤の副作用、心理的ストレス化学療法患者の50〜80%
味覚変化味蕾(みらい)細胞のダメージ化学療法患者の45〜75%
吐き気・嘔吐抗がん剤による消化管刺激使用薬剤により30〜90%
口内炎粘膜細胞のダメージ化学療法患者の40%前後
下痢・便秘腸管粘膜への影響治療内容により異なる

これらの症状が重なると、食事量が大幅に減少し、体重減少と筋肉量の低下が急速に進みます。がん患者の約50%に「がん悪液質」と呼ばれる著しい体重減少と筋肉の消耗が見られ、治療の継続にも影響を及ぼします。

体力を維持する高たんぱく・高カロリー食

がん治療中は、体の修復と免疫機能の維持のために、通常よりも多くのエネルギーとたんぱく質が必要です。日本臨床腫瘍学会のガイドラインでは、がん治療中の栄養目標として以下の値が示されています。

  • エネルギー:25〜30kcal/kg(体重)/日(通常より高め)
  • たんぱく質:1.0〜1.5g/kg(体重)/日
  • 脂質:総エネルギーの25〜35%

しかし、食欲不振で十分な量を食べられないことが多いため、少量でも栄養密度の高い食事を心がけることが重要です。

食べやすく栄養価を高める工夫

  • 卵やチーズをプラス:スープや煮物に卵を落とす、サラダにチーズを加えるなど、少量で効率よくたんぱく質とカロリーを摂取
  • 良質な油を活用:オリーブオイルやごま油で料理のカロリーアップ。炒め物やドレッシングに使うだけで50〜100kcal増やせる
  • 間食を活用:3食で食べきれない分は、間食で補う。ヨーグルト、プリン、バナナ、クリームチーズなどが食べやすい
  • 栄養補助食品:どうしても食事量が確保できない場合は、医師や管理栄養士の指導のもとで栄養補助飲料を活用する方法もあります

症状別の食事の工夫

治療の副作用による症状に合わせて、食事の形態や調理法を工夫することで、食べやすさと栄養摂取量を両立できます。

味覚変化があるとき

抗がん剤の影響で「何を食べても苦い」「金属の味がする」「甘味を強く感じる」といった味覚の変化が起きることがあります。

  • だし・酢・レモン汁・生姜など天然の風味を活かして味を調整する
  • 冷たい料理は味覚変化の影響を受けにくい(冷やし茶碗蒸し、冷製スープなど)
  • 金属製の食器を避け、陶器やプラスチック製を使うと金属味が軽減されることがある

吐き気があるとき

  • においの少ない冷たい料理や酸味のある食品を選ぶ
  • 1回の量を少なくし、1日5〜6回の分食にする
  • 脂っこいもの、甘すぎるものは避ける
  • 食事の前後に生姜湯を飲むと吐き気が和らぐことがある

口内炎があるとき

  • 刺激の少ないやわらかい食事形態(茶碗蒸し、豆腐料理、卵とじ)を中心にする
  • 熱すぎる・冷たすぎる食べ物は避け、人肌程度の温度にする
  • 酸味・辛味・塩分の強い味付けは控える

免疫力をサポートする栄養素

がん治療中は免疫力が低下しやすいため、免疫機能を支える栄養素を意識的に摂ることが大切です。

栄養素役割豊富な食品
ビタミンA粘膜の健康維持、免疫細胞の活性化にんじん、かぼちゃ、レバー
ビタミンC抗酸化作用、白血球の機能強化ブロッコリー、いちご、パプリカ
ビタミンD免疫調節、感染症予防鮭、きのこ類、卵黄
亜鉛免疫細胞の増殖、味覚の維持牡蠣、牛肉、大豆製品
EPA・DHA抗炎症作用、免疫バランスの調整青魚(さば、いわし、さんま)

食事だけでなく、十分な睡眠と適度な休養も免疫力の維持に重要です。治療中は無理をせず、食べられるときに食べられるものを少しずつ摂ることを心がけましょう。医師や管理栄養士と相談しながら、治療と栄養のバランスを調整していくことが大切です。

治療中の栄養管理を配食でサポート

配食のふれ愛では、がん治療中で食欲が低下している方にも食べやすいメニューをご用意しています。やわらかい食事形態への変更、味付けの調整、少量でも栄養密度の高い献立など、お一人おひとりの状態に合わせた対応が可能です。管理栄養士監修の栄養バランスの整った食事で、治療中の体力維持をお手伝いします。

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関連用語

たんぱく質

筋肉・臓器・免疫細胞など体の組織をつくる三大栄養素の一つ。がん治療中は1.0〜1.5g/kg/日が推奨される。

低栄養

必要な栄養素やエネルギーが不足した状態。がん治療中は悪液質による急速な低栄養に注意が必要。

介護食

噛む力や飲み込む力が低下した方のために食事形態を調整した食事。治療の副作用時にも活用される。

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