順番が逆になる時期がある

これまでの記事では、「食べられるようにする」ための方法を書いてきました。しかし、人生の最終段階では、考え方が変わります。

老衰や進行した病気の終末期には、食べないから弱るのではなく、体が終わりに向かっているから食べられなくなるという順番になります。この時期に無理に食べさせると、次のことが起きます。

  • 誤嚥して肺炎を起こす
  • むくみ、痰の増加、呼吸が苦しくなる
  • 吐き気、腹部の張り
  • 本人が苦痛を感じる

食べさせることが、必ずしも本人のためにならない時期がある。これは受け入れがたいことですが、事実として知っておく必要があります。

見極めは医療者と

重要な注意点があります。食べられない原因が、治療できるものであることは非常に多いのです。

  • 薬の副作用(薬が多いとき
  • 感染症、脱水
  • 便秘
  • 口の中の問題(口内炎、入れ歯、カンジダ)
  • うつ状態(気分の落ち込みと食欲
  • 飲み込みの機能の低下(訓練で改善することがあります)

「もう年だから」で片づけないでください。まず医師に診てもらい、治せるものがないか確認する。そのうえで、終末期と判断された場合に、この記事の話になります。

人工的な水分・栄養補給

口から食べられなくなったとき、次の選択肢が示されます。

方法内容
点滴(末梢静脈)水分と少量の糖分。長期の栄養維持はできません
中心静脈栄養太い血管から高カロリー輸液。感染の危険があります
経鼻胃管鼻からチューブ。不快感が強く、自己抜去も多い
胃ろう腹部から胃へ。管理は比較的容易。回復が見込める場合は有効
何もしない(自然経過)口から食べられる分だけ。苦痛は少ないとされます

どれが正しいという答えはありません。回復が見込めるのか、本人が何を望んでいたのか、家族が納得できるか。この3つで決まります。

胃ろうは「悪いもの」と語られることがありますが、回復期に一時的に使い、口から食べられるようになって外す例も多くあります(経管栄養から口へ)。一律に否定するのは誤りです。

事前に話しておく

この判断を、意識がなくなってから家族が迫られるのは、非常に苦しいことです。元気なうちに話しておいてください。

  • 人生会議(ACP):本人・家族・医療者で、これからのことを繰り返し話し合う取り組み
  • どこで過ごしたいか(自宅、病院、施設)
  • 食べられなくなったらどうしてほしいか
  • 誰に決めてほしいか
  • 気持ちは変わってよい。一度決めたら終わりではありません

「縁起でもない」と避けられがちですが、話しておくことは、残される側を守ります。

最後まで、口から楽しむ

栄養を摂ることが目的でなくなっても、口から味わうことには意味が残ります。

  • お楽しみ程度の食事。ひとくちのアイスクリーム、好きだったものを少し
  • 味わうだけでもよい。飲み込まなくても、舌で感じることに意味があります
  • 口腔ケアを続ける。口の中が清潔だと、味を感じられ、肺炎も防げます
  • 好きだった味、家族と食べた料理。記憶に届くことがあります
  • 誤嚥のリスクは医療者と相談して。「絶対にダメ」ではなく、どうすれば安全に楽しめるかを一緒に考えてもらう

食事は栄養補給の手段であると同時に、生きている実感そのものです。最後の時期に、その両方を切り分けて考えられると、選択が少し楽になります。

相談先

  • 主治医、訪問診療医
  • 訪問看護師(いちばん身近に相談できます
  • ケアマネジャー
  • 緩和ケアチーム、病院の相談室
  • 地域包括支援センター

家族だけで抱えないでください。迷って当然の判断です。専門職と一緒に考えてください。

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関連用語

誤嚥性肺炎

食べ物や唾液が気管に入って起きる肺炎。高齢者の肺炎の多くを占めます。

嚥下障害

飲み込みがうまくいかない状態。むせや口の中の残留が目印になります。

ケアマネジャー

介護保険のケアプランを作り、サービス事業者との調整を担う専門職です。

低栄養

エネルギーとたんぱく質が不足した状態。高齢者の要介護化の入口になります。

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