ヘモグロビン値が正常でも体内の鉄が枯渇している「かくれ貧血」。高齢者の疲れやすさや息切れの原因かもしれません。鉄分の正しい摂り方を解説します。
厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、65歳以上の高齢者のうち、男性で約11%、女性で約13%が貧血と診断されています。しかし、診断基準に満たない「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏症)」を含めると、その割合はさらに高くなると推定されています。
かくれ貧血とは、血液中のヘモグロビン値は正常範囲にあるものの、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が枯渇している状態です。血液検査では見逃されやすく、原因不明の疲労感や息切れ、めまいとして放置されがちです。
高齢者の貧血は大きく分けて2つのタイプがあります。
いずれの場合も、食事からの鉄分摂取を適切に管理することが、予防と改善の基本になります。
貧血やかくれ貧血では、以下のような症状が現れます。年齢のせいだと見過ごされがちですが、食事の見直しで改善できるケースも少なくありません。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、65歳以上の鉄の推奨量は男性で7.5mg/日、女性で6.5mg/日です。しかし、実際の摂取量は推奨量をわずかに下回っている方が多く、特に食事量が減少した高齢者では不足しやすい栄養素です。
食品に含まれる鉄分には、吸収率が大きく異なる2種類があります。
| 種類 | 吸収率 | 主な食品 |
|---|---|---|
| ヘム鉄 | 15〜35% | レバー、赤身肉、かつお、まぐろ、あさり |
| 非ヘム鉄 | 2〜5% | ほうれん草、小松菜、大豆、ひじき、卵黄 |
ヘム鉄は動物性食品に含まれ、非ヘム鉄の3〜10倍の吸収率を持ちます。効率よく鉄分を摂取するには、肉や魚からのヘム鉄を積極的に取り入れることが重要です。
| 食材 | 1食の目安量 | 鉄分量 |
|---|---|---|
| 豚レバー | 50g | 6.5mg |
| 鶏レバー | 50g | 4.5mg |
| 牛赤身肉 | 80g | 2.1mg |
| かつお | 80g | 1.5mg |
| あさり(水煮) | 30g | 11.3mg |
| ほうれん草(ゆで) | 80g | 0.7mg |
| 納豆 | 1パック(40g) | 1.3mg |
ほうれん草は鉄分が豊富なイメージがありますが、実は含有量は少なめで吸収率も低いため、それだけで鉄を補うのは困難です。レバーや赤身肉との組み合わせが効果的です。
鉄分は単体で摂るよりも、吸収を助ける栄養素と組み合わせることで効果が大幅に高まります。
非ヘム鉄の吸収率を飛躍的に高めるのがビタミンCです。ビタミンCは非ヘム鉄を吸収されやすい形(2価鉄)に還元する働きがあり、同時に摂ることで吸収率が2〜3倍に向上するという研究結果があります。
ビタミンB12と葉酸は赤血球の生成に不可欠な栄養素です。鉄分と同時にこれらが不足すると、鉄があっても正常な赤血球がつくれません。ビタミンB12はレバー・あさり・さんまに、葉酸はブロッコリー・枝豆・ほうれん草に豊富に含まれます。
一方で、鉄の吸収を妨げる成分もあります。食事のタイミングに注意しましょう。
貧血予防のための食事は、特別な献立を用意する必要はありません。日常の食事に少しの工夫を加えることで、十分な鉄分を確保できます。
ただし、貧血の症状が持続する場合は、食事だけでなく医療機関の受診も大切です。特に高齢者の場合、消化管出血や慢性疾患が原因となっていることもあるため、定期的な血液検査を受けることをおすすめします。
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