高齢者の貧血 — その種類と見逃しやすいサイン

厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、65歳以上の高齢者のうち、男性で約11%、女性で約13%が貧血と診断されています。しかし、診断基準に満たない「かくれ貧血(潜在性鉄欠乏症)」を含めると、その割合はさらに高くなると推定されています。

かくれ貧血とは、血液中のヘモグロビン値は正常範囲にあるものの、体内の貯蔵鉄(フェリチン)が枯渇している状態です。血液検査では見逃されやすく、原因不明の疲労感や息切れ、めまいとして放置されがちです。

高齢者に多い貧血の種類

高齢者の貧血は大きく分けて2つのタイプがあります。

  • 鉄欠乏性貧血:鉄の摂取不足や吸収障害、慢性的な出血(消化管出血など)が原因。高齢者の貧血の約30%を占めます
  • 慢性疾患に伴う貧血(ACD):慢性腎臓病、関節リウマチ、がんなどの慢性炎症により鉄の利用が阻害される貧血。高齢者特有の原因として最も多く、約40%を占めます

いずれの場合も、食事からの鉄分摂取を適切に管理することが、予防と改善の基本になります。

こんな症状に注意

貧血やかくれ貧血では、以下のような症状が現れます。年齢のせいだと見過ごされがちですが、食事の見直しで改善できるケースも少なくありません。

  • 疲れやすい、だるい
  • 階段を上ると息切れする
  • 顔色が悪い、爪が割れやすい
  • 氷を異常に食べたくなる(氷食症)
  • 集中力が低下する

鉄分の必要量とヘム鉄・非ヘム鉄の違い

日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、65歳以上の鉄の推奨量は男性で7.5mg/日、女性で6.5mg/日です。しかし、実際の摂取量は推奨量をわずかに下回っている方が多く、特に食事量が減少した高齢者では不足しやすい栄養素です。

ヘム鉄と非ヘム鉄

食品に含まれる鉄分には、吸収率が大きく異なる2種類があります。

種類吸収率主な食品
ヘム鉄15〜35%レバー、赤身肉、かつお、まぐろ、あさり
非ヘム鉄2〜5%ほうれん草、小松菜、大豆、ひじき、卵黄

ヘム鉄は動物性食品に含まれ、非ヘム鉄の3〜10倍の吸収率を持ちます。効率よく鉄分を摂取するには、肉や魚からのヘム鉄を積極的に取り入れることが重要です。

主な鉄分食材と含有量

食材1食の目安量鉄分量
豚レバー50g6.5mg
鶏レバー50g4.5mg
牛赤身肉80g2.1mg
かつお80g1.5mg
あさり(水煮)30g11.3mg
ほうれん草(ゆで)80g0.7mg
納豆1パック(40g)1.3mg

ほうれん草は鉄分が豊富なイメージがありますが、実は含有量は少なめで吸収率も低いため、それだけで鉄を補うのは困難です。レバーや赤身肉との組み合わせが効果的です。

鉄分の吸収を高める食べ合わせと食事の工夫

鉄分は単体で摂るよりも、吸収を助ける栄養素と組み合わせることで効果が大幅に高まります。

ビタミンCで吸収率アップ

非ヘム鉄の吸収率を飛躍的に高めるのがビタミンCです。ビタミンCは非ヘム鉄を吸収されやすい形(2価鉄)に還元する働きがあり、同時に摂ることで吸収率が2〜3倍に向上するという研究結果があります。

  • ほうれん草のおひたしにレモン汁をかける
  • レバニラ炒めにピーマンやパプリカを加える
  • 食後に柑橘類やいちごをデザートに

ビタミンB群との相乗効果

ビタミンB12と葉酸は赤血球の生成に不可欠な栄養素です。鉄分と同時にこれらが不足すると、鉄があっても正常な赤血球がつくれません。ビタミンB12はレバー・あさり・さんまに、葉酸はブロッコリー・枝豆・ほうれん草に豊富に含まれます。

吸収を妨げるものに注意

一方で、鉄の吸収を妨げる成分もあります。食事のタイミングに注意しましょう。

  • お茶・コーヒーのタンニン:食事中・食後30分以内は控えめに
  • 乳製品のカルシウム:大量のカルシウムは鉄の吸収を阻害するため、鉄を意識した食事とは時間をずらす
  • 食物繊維やフィチン酸:全粒穀物や豆類に含まれるフィチン酸は非ヘム鉄の吸収を抑制

毎日の食事で実践できる貧血予防のポイント

貧血予防のための食事は、特別な献立を用意する必要はありません。日常の食事に少しの工夫を加えることで、十分な鉄分を確保できます。

  • 朝食に卵料理を取り入れる(卵黄1個で鉄0.9mg)
  • 週2〜3回は赤身の肉か魚をメインにする
  • レバーは月2〜3回取り入れる(過剰摂取に注意)
  • 味噌汁にあさりやしじみを入れる
  • 副菜に小松菜やほうれん草を意識的に使う
  • 食事と一緒にビタミンCを含む野菜や果物を摂る

ただし、貧血の症状が持続する場合は、食事だけでなく医療機関の受診も大切です。特に高齢者の場合、消化管出血や慢性疾患が原因となっていることもあるため、定期的な血液検査を受けることをおすすめします。

配食のふれ愛の鉄分バランス管理

配食のふれ愛では、管理栄養士が監修した献立で鉄分をバランスよく摂取できるよう工夫しています。赤身肉・レバー・魚・大豆製品をローテーションで使用し、ビタミンCを含む副菜と組み合わせることで鉄分の吸収効率を高めています。噛む力や飲み込む力に不安のある方には、やわらかく調理した鉄分豊富な食材を使ったメニューもご用意しています。

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関連用語

鉄分

赤血球のヘモグロビンを構成する必須ミネラル。不足すると貧血を引き起こし、疲労感や息切れの原因になる。

貧血

血液中のヘモグロビン濃度が低下した状態。高齢者では鉄欠乏性と慢性疾患に伴うものが多い。

ビタミンB群

エネルギー代謝や赤血球の生成に関わるビタミン群。B12と葉酸は貧血予防に不可欠。

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