高齢者の食事と栄養に関する用語解説
鉄分とは、赤血球に含まれるヘモグロビンの主要な構成成分で、肺から取り込んだ酸素を全身の細胞に届けるために不可欠なミネラルです。体内の鉄の約60〜70%はヘモグロビンに、約3〜5%は筋肉のミオグロビンに、残りは肝臓・脾臓・骨髄にフェリチンとして貯蔵されています。
食品中の鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。ヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に含まれ、体内吸収率は15〜35%と高いのが特徴です。代表的な食品としては、レバー(豚レバー100gあたり約13mg)、赤身の肉、かつお、まぐろなどがあります。一方、非ヘム鉄は野菜・穀物・大豆製品など植物性食品に含まれ、吸収率は2〜5%と低めです。ただし、ビタミンCと一緒に摂取すると非ヘム鉄の吸収率が3〜6倍に向上することが知られています。
鉄分が不足すると、ヘモグロビンの産生が減少し「鉄欠乏性貧血」が発症します。症状としては、疲れやすい、息切れ、動悸、顔色が悪い、めまい、集中力の低下などが現れます。高齢者の場合、これらの症状が「年のせい」として見過ごされることが多く、「隠れ貧血」と呼ばれる潜在的な鉄不足の状態にある方が少なくありません。
厚生労働省の食事摂取基準では、65歳以上の推奨量は男性7.5mg/日、女性(閉経後)6.5mg/日とされています。しかし、胃酸分泌の低下、服用中の薬剤の影響、食事量の減少などにより、高齢者は鉄分の摂取量と吸収率の両方が低下しやすい状況にあります。
高齢者の貧血は転倒リスクの増加と密接に関連しています。貧血による酸素供給の低下は、筋力や持久力の低下、ふらつきを引き起こし、転倒・骨折の危険性を高めます。さらに、脳への酸素供給が不足すると認知機能にも影響を及ぼし、物忘れや判断力の低下といった症状が現れることがあります。日本の高齢者における貧血の有病率は男性で約11%、女性で約14%と報告されており、決して珍しい状態ではありません。
また、鉄分は免疫機能の維持にも重要な役割を果たしています。鉄不足はリンパ球の増殖を抑制し、感染症に対する抵抗力を低下させます。高齢者は肺炎や尿路感染症にかかりやすい傾向がありますが、適切な鉄分摂取による免疫力の維持は感染症予防の基本です。慢性疾患を持つ高齢者では「慢性疾患に伴う貧血(ACD)」という、鉄分は足りているのに炎症によって鉄の利用が阻害される状態もあるため、自己判断でサプリメントを摂取するのではなく、医師の診断を受けることが大切です。
配食のふれ愛では、赤身の肉や魚、レバー、ほうれん草、小松菜などの鉄分豊富な食材を献立に積極的に取り入れています。管理栄養士がビタミンCを含む野菜や果物を組み合わせて鉄分の吸収効率を高める工夫を行っており、日々のお食事で自然に鉄分を補給できます。貧血が気になる方、疲れやすいとお感じの方も、バランスの取れたお弁当でしっかり栄養をサポートいたします。
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