サルコペニアとは何か — AWGS2019による定義と診断

サルコペニアとは、加齢に伴って骨格筋の量と質が低下し、身体機能が障害される状態を指します。ギリシャ語の「sarx(筋肉)」と「penia(喪失)」を組み合わせた造語で、2016年にICD-10の疾患コードが付与された正式な疾患です。

2019年にアジアのワーキンググループ(AWGS2019)が改訂した診断基準では、以下の3つの指標を組み合わせて判定します。

AWGS2019の診断基準

指標男性女性
握力28kg未満18kg未満
歩行速度1.0m/秒以下
骨格筋量指数(SMI)7.0kg/m²未満5.7kg/m²未満

握力または歩行速度の低下が確認された場合に「サルコペニアの可能性あり」とされ、さらに筋肉量の低下が確認されると「サルコペニア」と診断されます。日本の65歳以上の高齢者のうち、約15〜20%がサルコペニアに該当すると推定されています。

サルコペニアの原因は大きく2つに分けられます。加齢そのものによる「一次性サルコペニア」と、疾患・低栄養・不活動による「二次性サルコペニア」です。特にたんぱく質の慢性的な不足は、二次性サルコペニアの最大の要因とされています。

食事によるサルコペニア予防 — たんぱく質1.2g/kg/日の根拠

サルコペニアの予防と改善には、十分なたんぱく質の摂取が不可欠です。欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)のガイドラインでは、サルコペニア予防のためのたんぱく質摂取量として体重1kgあたり1.0〜1.2g/日を推奨しています。

体重別の推奨たんぱく質量

体重1.0g/kgの場合1.2g/kgの場合
45kg45g/日54g/日
50kg50g/日60g/日
55kg55g/日66g/日
60kg60g/日72g/日

ポイントは、たんぱく質を3食に均等に分けて摂取することです。1回の食事で20〜30gのたんぱく質を摂ると、筋たんぱく質の合成が最も効率よく行われます。朝食を抜いたり、パンとお茶だけの軽い朝食では、1日のたんぱく質バランスが崩れてしまいます。

ロイシンの重要性

必須アミノ酸の一つであるロイシンは、筋たんぱく質の合成を直接刺激するシグナル物質として知られています。高齢者では若年者に比べてロイシンの閾値が高く、1食あたり2.5〜3.0gのロイシン摂取が必要とされています。

ロイシンが豊富な食品には、鶏むね肉、マグロ赤身、卵、大豆製品、乳製品があります。特に乳清(ホエイ)たんぱく質はロイシン含有率が高く、サルコペニア予防の研究で注目されています。

運動と食事の組み合わせが最も効果的

サルコペニアの予防・改善には、食事だけでなくレジスタンス運動(筋力トレーニング)との併用が最も効果的です。運動直後30分〜1時間以内にたんぱく質を摂取すると、筋たんぱく質合成がさらに促進されることが複数の研究で示されています。

  • 椅子からの立ち座り:スクワットの代替として、太ももの大きな筋肉を鍛えます。1日10回×2〜3セットから始めましょう
  • かかと上げ:つま先立ちをゆっくり繰り返すことで、ふくらはぎの筋力を維持します
  • 壁押し:壁に手をついて腕立て伏せの動作をします。上半身の筋力維持に有効です

フレイルの状態にある方は、まず食事の改善から取り組み、体力が回復してきたら少しずつ運動を加えていく段階的なアプローチが安全です。

サルコペニアを見逃さないためのセルフチェック

次のような変化に気づいたら、サルコペニアの可能性を疑ってみましょう。

  • ペットボトルのキャップが開けにくくなった
  • 横断歩道を青信号のうちに渡りきれなくなった
  • 椅子から手を使わずに立ち上がれなくなった
  • ふくらはぎの一番太い部分が両手の親指と人差し指で囲める(指輪っかテスト)
  • 半年で体重が2〜3kg減った(意図せず)

これらのサインは「年齢のせい」と見過ごされがちですが、早期に気づいて食事と運動で対策すれば、筋肉量の回復は十分に可能です。特に食事面では、良質なたんぱく質を毎食しっかり摂ることが改善の第一歩です。

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配食のふれ愛では、管理栄養士が毎食のたんぱく質量を管理し、肉・魚・卵・大豆をバランスよく組み合わせた献立をお届けしています。普通食で1食あたり約20gのたんぱく質を確保し、ロイシンの多い食材も積極的に取り入れています。食が細い方には、少量でも栄養密度の高い「小町」メニューもご用意しています。

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関連用語

サルコペニア

加齢に伴い骨格筋量と筋力が低下した状態。AWGS2019基準で握力・歩行速度・筋肉量の3指標で診断される。

たんぱく質

筋肉・臓器・血液など体の組織をつくる三大栄養素の一つ。サルコペニア予防には1.0〜1.2g/kg/日が推奨。

フレイル

身体的・精神的・社会的な機能が低下した虚弱状態。サルコペニアはフレイルの主要な構成要素。

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