高齢者の食事と栄養に関する用語解説
脳の神経細胞の障害により、記憶力や判断力などの認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態の総称。
認知症は単一の疾患ではなく、さまざまな原因により脳の神経細胞が障害されて認知機能(記憶、思考、判断、言語、見当識など)が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす状態の総称です。日本の認知症患者数は2025年時点で約700万人と推計され、65歳以上の約5人に1人が該当するとされています。2040年には約800〜950万人に増加すると予測されており、超高齢社会における最大の課題の一つです。
認知症の原因疾患で最も多いのはアルツハイマー型認知症(全体の約60〜70%)で、脳にアミロイドβたんぱく質やタウたんぱく質が蓄積して神経細胞が徐々に死滅していきます。次に多いのが血管性認知症(約15〜20%)で、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因です。そのほかレビー小体型認知症(約10%)、前頭側頭型認知症などがあります。
認知症の前段階として「軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)」があります。MCIの段階では日常生活にはほとんど支障がないものの、年齢相応以上の認知機能低下が認められます。MCIから認知症への移行率は年間約5〜15%ですが、適切な生活介入(食事、運動、社会参加、知的活動)により、約16〜41%は正常な認知機能に回復するとする研究もあり、早期発見・早期対応の重要性が指摘されています。
近年の研究で、食事と認知症の発症リスクとの間に強い関連があることが明らかになっています。地中海食(オリーブオイル、魚、野菜、果物、全粒穀物を豊富に含む食事パターン)を継続的に摂取している人は、認知症の発症リスクが約20〜30%低いとする複数の大規模研究があります。日本の久山町研究でも、大豆・大豆製品、野菜、海藻、牛乳・乳製品を多く摂る食事パターンが認知症リスクの低下と関連することが報告されています。
脳の健康に特に重要とされる栄養素には、EPA・DHA(青魚に多い不飽和脂肪酸で、脳の神経細胞膜の構成成分)、ビタミンB群(B6、B12、葉酸はホモシステインの代謝に関与し、高ホモシステイン血症は認知症のリスク因子)、抗酸化ビタミン(ビタミンC、E)、ポリフェノールなどがあります。一方、認知症が進行すると「食べることを忘れる」「食べ物を認識できない」「嚥下障害が現れる」など食事行動そのものに支障をきたすことがあり、適切な食事支援と見守りが必要になります。フレイルと認知症は相互に影響し合い、フレイルの人は認知症のリスクが約2倍になるとする報告もあります。
配食のふれ愛のお弁当は、脳の健康に配慮した献立を心がけています。魚を多く使用したメニューでEPA・DHAを確保し、緑黄色野菜や大豆製品、海藻をバランスよく取り入れています。認知症の方が食べやすいよう、一口大やきざみ食、ムース食など食形態の調整にも対応しています。また、毎日の配達は安否確認を兼ねており、「食事の残しが増えた」「以前と様子が違う」といった変化に早期に気づくことで、認知症の進行や体調変化の早期発見にお役立てください。
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