高齢者の食事と栄養に関する用語解説
食物繊維とは、人の消化酵素では分解・吸収されない食物中の成分の総称です。かつては「栄養にならない不要物」と考えられていましたが、現在では腸内環境の改善、血糖値の上昇抑制、コレステロールの低下、大腸がんの予防など、多岐にわたる健康効果が認められ、「第6の栄養素」と位置づけられています。水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」の2種類に大別されます。
水溶性食物繊維は水に溶けてゲル状になる性質があり、ペクチン(果物・野菜)、グルコマンナン(こんにゃく)、アルギン酸(海藻)、β-グルカン(大麦・きのこ)などが代表的です。胃の中で食物を包み込んでゆっくりと消化管を移動するため、食後の血糖値の急上昇を抑制します。また、小腸でコレステロールや胆汁酸を吸着して体外に排泄する働きがあり、血中コレステロール値の低下に貢献します。さらに、大腸で腸内細菌(善玉菌)のエサとなり、短鎖脂肪酸を産生して腸の健康を維持します。
不溶性食物繊維は水を吸って膨らむ性質があり、セルロース(野菜全般)、ヘミセルロース(穀物・野菜)、リグニン(ごぼう・カカオ)、キチン(きのこ・甲殻類)などが含まれます。便のかさを増し、腸壁を刺激してぜん動運動を促進することで、便通を改善します。また、有害物質を吸着して大腸での滞留時間を短縮するため、大腸がんの予防にも効果があるとされています。
厚生労働省の食事摂取基準(2020年版)では、65歳以上の目標量は男性21g以上/日、女性18g以上/日とされています。しかし、令和元年国民健康・栄養調査によると、70歳以上の平均摂取量は約15g/日であり、目標量に達していない方が多い状況です。食物繊維が豊富な食品としては、野菜類(ごぼう100gあたり約5.7g、ブロッコリー約4.4g)、きのこ類(干ししいたけ約41g)、海藻類(ひじき約51g)、豆類(おから約9.7g)、穀類(玄米ごはん約1.4g)などがあります。
高齢者にとって便秘は最も身近な健康問題の一つです。65歳以上の約3割が便秘に悩んでいるとされ、加齢に伴う腸のぜん動運動の低下、運動量の減少、食事量の減少、水分摂取の不足などが原因で起こります。便秘は食欲低下や腹部膨満感を引き起こし、低栄養の悪循環につながります。不溶性食物繊維で便のかさを増やし、水溶性食物繊維で腸内環境を整えることが便秘改善の基本です。
また、高齢者に多い糖尿病の管理においても食物繊維は重要な役割を果たします。水溶性食物繊維は食後の血糖値の急上昇(血糖スパイク)を緩やかにする効果があり、糖尿病の予防と管理に有効です。さらに、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスを整えることで免疫機能を維持する効果も期待されています。近年の研究では、腸内環境が認知機能や精神状態にも影響を及ぼす「腸脳相関」が注目されており、食物繊維による腸内環境の改善は全身の健康に幅広く寄与する可能性があります。
配食のふれ愛では、毎食の副菜に野菜・きのこ・海藻をバランスよく取り入れ、食物繊維を十分に摂取できる献立を設計しています。管理栄養士が水溶性・不溶性の両方の食物繊維に配慮し、便秘の予防や血糖値のコントロールをお食事からサポートいたします。おかずの彩りと食感にも工夫を凝らし、食べる楽しみとともに腸の健康を守ります。
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