高齢者の食事と栄養に関する用語解説
ムース食とは、食材をミキサーなどでペースト状にした後、ゲル化剤(寒天やゼラチン、増粘多糖類など)を加えて元の食材の形に成形し直した介護食です。噛む力(咀嚼力)や飲み込む力(嚥下機能)が著しく低下した方でも、舌と上あごで簡単につぶして安全に食べられます。見た目が元の料理に近いため、食欲の維持にも大きく貢献する最新の食事形態です。
ムース食は、日本介護食品協議会が定める「ユニバーサルデザインフード(UDF)」の区分4「かまなくてよい」に相当する食事形態です。従来のミキサー食やペースト食では、すべての食材が均一にどろどろになってしまい、何を食べているのか見た目で判別できないという問題がありました。ムース食はこの課題を解決するために開発され、肉は肉の形、魚は魚の形、野菜は野菜の形に成形し直すことで、食事本来の楽しみを取り戻すことができます。
ムース食の製造には、食材をペースト化する工程、ゲル化剤を混合する工程、型に流し込んで成形する工程、冷却して固める工程があります。使用するゲル化剤には、酵素(プロテアーゼなど)を利用するタイプや、増粘多糖類を使うタイプがあり、食材ごとに最適な配合が異なります。たんぱく質が多い肉や魚は酵素型が適しており、でんぷん質の多い食材には多糖類型が向いています。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の嚥下調整食分類2021では、ムース食はコード3(形はあるが押しつぶしが容易、離水が少なくべたつかない食事)からコード4(かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさが配慮された食事)に位置づけられます。医療機関や介護施設では、言語聴覚士(ST)や歯科医師による嚥下評価の結果に基づいて、適切な食事形態が選択されます。
高齢者にとってムース食は、嚥下障害のある方の栄養確保と食事の楽しみを両立する重要な選択肢です。加齢により喉の筋力や反射が衰えると、通常の食事では食べ物が気管に入り込む「誤嚥」のリスクが高まります。誤嚥を繰り返すと誤嚥性肺炎を引き起こし、高齢者の死因として上位を占めています。ムース食は口の中でまとまりやすく、のどを通過する際にばらけにくいため、誤嚥のリスクを大幅に軽減できます。
また、見た目が普通の食事に近いことは、高齢者の食欲維持において極めて重要です。ミキサー食にされると「自分は病人だ」という意識が強まり、食欲が落ちて低栄養につながるケースが多く見られます。ムース食は彩りや盛り付けを工夫できるため、食事を目で楽しむことができ、「おいしそう」という感覚が唾液の分泌を促して消化吸収を助ける効果もあります。実際に、ミキサー食からムース食に切り替えた施設では、食事摂取量が平均で15〜20%向上したという報告もあります。
配食のふれ愛では、ムース食を正規メニューとしてご提供しています。FC本部の管理栄養士が監修した献立をもとに、食材ごとに適切なゲル化剤を使用し、見た目も味も楽しめるムース食をお作りしています。魚は魚の形、煮物は煮物の形で盛り付け、普通食と同じおかずの構成で栄養バランスを維持しています。噛む力や飲み込む力に不安がある方は、ぜひ一度無料試食をお試しください。ご利用者様の嚥下状態に合わせた食事形態のご相談も承っております。
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