「コレステロールが高い」と言われて食事を極端に制限していませんか。脂質は体に欠かせない栄養素です。正しい知識で「摂るべき脂質」と「避けるべき脂質」を見極めましょう。
脂質は炭水化物、たんぱく質と並ぶ三大栄養素の一つで、1gあたり9kcalと最も高いエネルギーを持つ栄養素です。しかし、脂質の役割はエネルギー源にとどまりません。
特に高齢者の場合、脂質を過度に制限するとエネルギー不足による低栄養のリスクが高まります。やせ過ぎは肥満と同等、あるいはそれ以上に健康リスクが高いことが複数の疫学研究で示されています。
コレステロールそのものは「善」でも「悪」でもなく、体に不可欠な物質です。問題になるのは、コレステロールを運ぶ「リポたんぱく質」の種類です。
| 種類 | 通称 | 役割 | 基準値 |
|---|---|---|---|
| LDLコレステロール | 悪玉 | 肝臓から全身にコレステロールを運ぶ。過剰になると血管壁に蓄積 | 140mg/dL未満 |
| HDLコレステロール | 善玉 | 余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す | 40mg/dL以上 |
| 中性脂肪(TG) | — | エネルギーの貯蔵形態。過剰になると動脈硬化を促進 | 150mg/dL未満 |
注意したいのは、高齢者ではコレステロールが低すぎることもリスクになるという点です。日本脂質栄養学会の研究では、75歳以上の高齢者においてLDLコレステロールが100mg/dL未満の群は、120〜140mg/dLの群と比べて総死亡率が高いというデータが報告されています。
コレステロールは免疫機能にも関わっているため、極端に低い値は感染症のリスクを高める可能性があります。高齢者のコレステロール管理は、「下げすぎない」という視点も大切です。必ず主治医と相談のうえ、適切な目標値を設定しましょう。
すべての脂質が同じではありません。積極的に摂りたい「良い脂質」と、控えたい「悪い脂質」を知ることが重要です。
EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は青魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸です。以下の効果が科学的に確認されています。
厚生労働省は、EPA・DHAの合計で1日1g以上の摂取を推奨しています。さば1切れ(100g)で約2.5gのEPA・DHAが摂れるため、週2〜3回の青魚の摂取で目標を達成できます。
えごま油、亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸も、体内でEPA・DHAに一部変換されます。加熱に弱いため、サラダのドレッシングや納豆にかけるなど、生で使うのがポイントです。
トランス脂肪酸は、液体の植物油を固形にする加工(水素添加)の過程で生成される脂質です。マーガリン、ショートニング、ファストフードの揚げ油、市販の菓子類に含まれることがあります。
WHOは、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギーの1%未満に抑えるよう勧告しています。トランス脂肪酸はLDLコレステロールを増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすという「二重の悪影響」があるためです。
バター、ラード、肉の脂身、生クリームなどに多い飽和脂肪酸は、摂りすぎるとLDLコレステロールを上昇させます。ただし、完全に避ける必要はなく、総エネルギーの7%以下を目安にするのが現実的です。
糖尿病や心疾患のリスクがある方は、脂質の量だけでなく質に注目し、飽和脂肪酸をオメガ3脂肪酸に「置き換える」意識が大切です。卵に関しては、2015年に日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値が撤廃されています。栄養価の高い食品ですので、1日1〜2個は安心して食べられます。
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