脂質が果たす大切な役割

脂質は炭水化物、たんぱく質と並ぶ三大栄養素の一つで、1gあたり9kcalと最も高いエネルギーを持つ栄養素です。しかし、脂質の役割はエネルギー源にとどまりません。

  • 細胞膜の構成成分:約60兆個の全身の細胞は、リン脂質とコレステロールでできた膜に包まれている
  • ホルモンの材料:副腎皮質ホルモン、性ホルモン(エストロゲン、テストステロン)はコレステロールから合成される
  • 胆汁酸の原料:消化に必要な胆汁酸もコレステロールから作られる
  • 脂溶性ビタミンの吸収:ビタミンA・D・E・Kは脂質と一緒に摂ることで吸収率が高まる
  • 体温の保持と臓器の保護:皮下脂肪が体温を維持し、内臓脂肪が臓器を衝撃から守る

特に高齢者の場合、脂質を過度に制限するとエネルギー不足による低栄養のリスクが高まります。やせ過ぎは肥満と同等、あるいはそれ以上に健康リスクが高いことが複数の疫学研究で示されています。

LDLとHDL — 「善玉」「悪玉」の正体

コレステロールそのものは「善」でも「悪」でもなく、体に不可欠な物質です。問題になるのは、コレステロールを運ぶ「リポたんぱく質」の種類です。

種類通称役割基準値
LDLコレステロール悪玉肝臓から全身にコレステロールを運ぶ。過剰になると血管壁に蓄積140mg/dL未満
HDLコレステロール善玉余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す40mg/dL以上
中性脂肪(TG)エネルギーの貯蔵形態。過剰になると動脈硬化を促進150mg/dL未満

高齢者のコレステロール基準 — 低すぎても問題

注意したいのは、高齢者ではコレステロールが低すぎることもリスクになるという点です。日本脂質栄養学会の研究では、75歳以上の高齢者においてLDLコレステロールが100mg/dL未満の群は、120〜140mg/dLの群と比べて総死亡率が高いというデータが報告されています。

コレステロールは免疫機能にも関わっているため、極端に低い値は感染症のリスクを高める可能性があります。高齢者のコレステロール管理は、「下げすぎない」という視点も大切です。必ず主治医と相談のうえ、適切な目標値を設定しましょう。

摂るべき脂質 — オメガ3脂肪酸の力

すべての脂質が同じではありません。積極的に摂りたい「良い脂質」と、控えたい「悪い脂質」を知ることが重要です。

オメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)

EPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は青魚に豊富に含まれるオメガ3脂肪酸です。以下の効果が科学的に確認されています。

  • 血中中性脂肪の低下:EPAは中性脂肪の合成を抑制し、血液をサラサラにする
  • 抗炎症作用:慢性炎症を抑え、動脈硬化の進行を遅らせる
  • 不整脈の予防:心臓のリズムを安定させる効果がある
  • 認知機能への好影響:DHAは脳の神経細胞膜の重要な構成成分

厚生労働省は、EPA・DHAの合計で1日1g以上の摂取を推奨しています。さば1切れ(100g)で約2.5gのEPA・DHAが摂れるため、週2〜3回の青魚の摂取で目標を達成できます。

植物由来のオメガ3

えごま油、亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸も、体内でEPA・DHAに一部変換されます。加熱に弱いため、サラダのドレッシングや納豆にかけるなど、生で使うのがポイントです。

避けるべき脂質 — トランス脂肪酸と過剰な飽和脂肪酸

トランス脂肪酸

トランス脂肪酸は、液体の植物油を固形にする加工(水素添加)の過程で生成される脂質です。マーガリン、ショートニング、ファストフードの揚げ油、市販の菓子類に含まれることがあります。

WHOは、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギーの1%未満に抑えるよう勧告しています。トランス脂肪酸はLDLコレステロールを増やすだけでなく、HDLコレステロールを減らすという「二重の悪影響」があるためです。

飽和脂肪酸

バター、ラード、肉の脂身、生クリームなどに多い飽和脂肪酸は、摂りすぎるとLDLコレステロールを上昇させます。ただし、完全に避ける必要はなく、総エネルギーの7%以下を目安にするのが現実的です。

糖尿病や心疾患のリスクがある方は、脂質の量だけでなく質に注目し、飽和脂肪酸をオメガ3脂肪酸に「置き換える」意識が大切です。卵に関しては、2015年に日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値が撤廃されています。栄養価の高い食品ですので、1日1〜2個は安心して食べられます。

良質な脂質を活かした配食のふれ愛の献立

配食のふれ愛では、青魚を週に複数回取り入れ、EPA・DHAの摂取をサポートしています。揚げ物は良質な油を使用し、トランス脂肪酸を極力排除。管理栄養士が脂質の量と質の両方を管理した献立で、コレステロールを適正範囲に保つ食生活をお手伝いします。

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関連用語

EPA・DHA

青魚に含まれるオメガ3脂肪酸。中性脂肪を下げ、血管の健康を守る。1日1g以上の摂取が推奨。

糖尿病

血糖値が慢性的に高い状態が続く疾患。脂質異常症を合併しやすく、脂質管理も重要。

たんぱく質

筋肉・臓器・血液をつくる三大栄養素。脂質と組み合わせてバランスよく摂ることが大切。

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